ジキルと!?

4/8
前へ
/8ページ
次へ
「探偵さん。それでは宜しく頼みます」 丁寧に頭を下げて。 そして、俺の中での格付けを下げて。 西園寺氏は帰って行った。 依頼の内容を分かり易く日本語でまとめると。 西園寺氏が発明した新薬の効能。 なんと、服用して夜になるとまったくの別人……心の中で押し殺している、こうでありたい自分……に変身してしまうと言う。 姿形も年齢も自由自在。 しかし薬の効果は夜だけで、元の西園寺氏に戻ると、変身していた間の記憶は残らない。 「お願いだ。今夜私がどうなるか。 何をするのか見ていて欲しい。 怖いのだ、自分が何に変わるのか。 どんな邪悪が顔を出すのか。 その様を、ただありのまま記録して。 包み隠さず教えて欲しい」 ジキルと(ナイト)、か。 こいつは危険な夜になるかもな。だが。 「ただ君よ、もし危険なら逃げてくれ」 そんな事言われて逃げる訳に行くかよ。こちとら空手柔道剣道合わせて八段。 (格付けはダウンしたものの)あの愉快な紳士を犯罪者にしてたまるか。 いざとなったら止めてみせる。 ジキルの騎士(ナイト)になってやるさ。 正直、そんな薬があるもんか、と思ってる。 しかし、背の高い温厚な紳士が、本能的な不快感や恐怖を感じさせる醜悪な小男に変貌する物語…… ジキルとハイドは読んだ事はなくても誰もが知ってる。 そして西園寺氏は当然、気付いているはず! 自分の名前に「ジキル」が入っていると! 子供の頃はからかわれたりしただろうし、研究しながら「よーしジキルとハイドになってやる!」なんて考えてたかもしれない。 だから実際には薬にそんな効果はなかったとしてもだ、強い思い込みとか自己催眠とかで彼は変身している可能性がある。 きっとそうだ。 ああ見えてノリやすい性格だもんな。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加