ジキルと!?

7/8
前へ
/8ページ
次へ
少女は俺を見てキョトンとしていたが、すぐに太陽の様な笑顔に戻り、言った。 「どうしたのー? 隠れてないで遊ぼうよー?」 少し迷ったが、子供の笑顔を曇らせる様な事は出来ない。 俺も精一杯の笑顔を作って、少女が差し出した手を握った。 「手を取れば、みんな今日からおともだちー!」 心の闇……それは誰にだってあるだろう。 心の奥底に潜んでいる、本当の自分。 どんな善人も裏を返せば、極悪非道の化け物かもしれない。 ハイドが胸に潜んでいてもおかしくない。 こんな世の中だ、生きてるだけで憎しみ(ヘイト)は心に溜まって行く。 西園寺氏もそう思ったから、俺に依頼をしたはずだ。 だが彼の心の奥底に潜んでいたものは、邪悪ではなかった。 ジキルとが潜んでいたのさ。 いや、ハイドがいたとしても、ハイジの方が強かったって事だ。 西園寺氏よ、分かる、分かるよ。 俺だって戻れるならもう一度、疲れを知らない子供になって。 野山を駆け回って、力いっぱい遊んでみたいもの。 面倒な事なんて全部忘れてさ。 犯罪者になんてなりたければいつでもなれる。自分を汚すのは簡単だ。 でもあの頃の、細胞の一つ一つが澄んでいた自分には二度となれないのだから。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加