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少女は俺を見てキョトンとしていたが、すぐに太陽の様な笑顔に戻り、言った。
「どうしたのー?
隠れてないで遊ぼうよー?」
少し迷ったが、子供の笑顔を曇らせる様な事は出来ない。
俺も精一杯の笑顔を作って、少女が差し出した手を握った。
「手を取れば、みんな今日からおともだちー!」
心の闇……それは誰にだってあるだろう。
心の奥底に潜んでいる、本当の自分。
どんな善人も裏を返せば、極悪非道の化け物かもしれない。
ハイドが胸に潜んでいてもおかしくない。
こんな世の中だ、生きてるだけで憎しみは心に溜まって行く。
西園寺氏もそう思ったから、俺に依頼をしたはずだ。
だが彼の心の奥底に潜んでいたものは、邪悪ではなかった。
ジキルと愛とが潜んでいたのさ。
いや、ハイドがいたとしても、ハイジの方が強かったって事だ。
西園寺氏よ、分かる、分かるよ。
俺だって戻れるならもう一度、疲れを知らない子供になって。
野山を駆け回って、力いっぱい遊んでみたいもの。
面倒な事なんて全部忘れてさ。
犯罪者になんてなりたければいつでもなれる。自分を汚すのは簡単だ。
でもあの頃の、細胞の一つ一つが澄んでいた自分には二度となれないのだから。
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