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 それは、最初に投げた発火性のある薬品とは違い。ニトログリセリンのように、少しの刺激で爆発するような「最も要注意の薬品」として、最後の攻撃用にと取っておいたものだった。……それを持ってるなら。いま、俺のやるべきことは……?  安藤は、左手の腐敗が肩を越え首回りまで達しているとわかった際に、「むやみに首を動かさないようにしよう」と考えていたが。その後、いきなり外から石を投げ込まれたり、堂本と須田の手足がポロポロともげたり、加奈子や瀬里奈がロッジから飛び出してきたりで、あちらこちらを急激に「振り向いていた」。その度に首は軋んだような音を発し、そして今や、両肩の上にかろうじて乗っかっているに近い状態だった。  そんな状態でも、お腹に穴が開いたみたいに、生きていられるもんなんだなあ……。安藤は他人事のようにそう考え、同時に「そんな状態になったら、長くは持たない」ことを、博士の死によって思い知らされていた。ようするに、俺ももう「長くはない」ってことか。だったら、最後に思いっきり「カッコつける」とするか……!!  安藤は咲月の正面を向き、「咲月ちゃん!!」と叫び。自分の口を出来るだけ大きく、「パカッ」と開いた。そして目線を、しきりに「上の方」へと向けた。  安藤の背後からは、咲月を狙うヤンキーどもが猛然と迫って来ている。咲月は安藤の仕草を見て、最初はなんのことかわからなかったが、突然ひらめいたように「安藤さん、そ、そんな……?!」と口に手を当てた。  安藤は口を開いたまま、首をこくりと縦に振った。その勢いで、安藤の首が肩の上で「グラリ」とよろめいた。それを見て咲月も、何をすべきか悟ったのだろう。「……わかりました!」と言うと、ポケットに詰めていた薬の瓶を取り出し、それを今度は、安藤の大きく開いた口の中に詰め込んだ。 「安藤さん、行きますよ!!」  安藤は、今度は頷かず、目線だけを「うん」の合図として、下方へ下げた。……さあ咲月ちゃん、思い切ってやってくれ。でっかい花火を打ち上げてくれ……!!
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