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26
一夜明けて。
咲月と博士が人目を避けて暮らしていた、山奥のロッジ回りは。今や多くの死体が散らばり……いや、多くの「もと人間」だった人体の破片がゴロゴロと転がる修羅場、惨劇の跡と化していた。今や動ける人間は、瀬里奈と加奈子、咲月の「3人の女性」だけだった。
「結局、誰も助けられなかったね……まあ、最初はあたしたちを助けてもらう予定だったから、これで良かったのかな」
瀬里奈が「須田だった体の部品」を地中に埋め、両手を合わせてお祈りを捧げながら、そう呟いた。
「そうだね……博士の話だと、結局は女だけが生き延びるってことだったしね。みんな体がモロくなってたし、ここで生き残ったとしても、この先長くは生きられなかったんじゃないかなあ?」
先に堂本を埋葬していた加奈子は、瀬里奈を慰めるというよりは、半ば諦めのような口ぶりでそう言った。
「そうですね……でも、皆さんのおかげで生き延びられたことに、ほんとに感謝してます」
咲月も博士を埋葬した場所に手を合わせ、その隣に埋めた安藤の「体」にも同じく祈りを捧げた。安藤の場合は頭部が爆発してしまったので、恐らくこれが安藤だったに違いないという、不確かなものではあったが。そう考えてお祈りすることが大事よねと、咲月は自分に言い聞かせていた。
「でも安藤さん、最後に自分の首を投げてって、咲月ちゃんに言ったんだって? あの人らしくないけど、最後くらいはカッコつけようって思ったのかしらね」
瀬里奈が不思議そうにそう言うと、咲月はニッコリ笑って答えた。
「はい、でもなんとなく、『投げてくれ!』というより、『投げてもいーよ~』みたいな、軽い感じは受けたんですけども。やっぱり腐敗が進行してたんで、正常ではない精神状態だったのかもしれませんね」
「投げてもいいよ、って。あはは、その方がなんとなく、安藤さんらしいなあ」
瀬里奈はケラケラと笑いながら、生真面目で何か気の弱そうな、安藤の顔を思い返していた。
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