第一話 消失

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第一話 消失

 「うぅん」 ジリリリリと鳴る目覚ましのけたたましい音で、私は夢から引き戻される。目を閉じたままで上に手を伸ばして、目覚ましを探り当てて目覚ましを止めると顔の前まで持ってくる。そこでようやく目を開ける。時計は6時を指し示していた。今日は休日だが、友人と出かける約束をしていた為に早めに目覚ましをかけていた。じわりじわりと下りていく瞼を必死堪える。このままではまた寝てしまう。二度寝してしまう前に布団から出よう。 「うあ゛あぁ〜」 可愛らしくない声を出しながら、寝そべったまま伸びをする。そして、体を起こそうとした。 「むえぇ?」 思わず変な声が出る。もう一度、起こそうとする。やはり、起き上がる事ができない。人知れず、鼓動が速くなる。何度も試みるが、一向に起き上がる事ができない。どうしてなのか。足元に視線を落とす。そこには当然足があるが為に掛け布団に膨らみがあるはずだった。だが、そこにはペタリと平たくなった掛け布団があった。背中にシャツがへばりつく。まさかと思いながら、掛け布団をガバッと剥ぐ。普通なら足があるべきところには何もなかった。
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