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第二話 電話
「え?」
私は自分の目が信じられいで居る。昨日まであった足が突如として消えているからだ。もしかすると夢を見ているのかも知れないと顔をつねくる。しっかりと痛い。これは夢ではないのだ。私は脚のあったはずの場所を見つめる。血は出ていない。恐る恐る手を伸ばし、脚のあった辺りを探ってみる。だが、手は何も無い所を行ったり来たりするだけだ。私は脚の断面に触れる。肌を触れている感触が伝わってくる。
「ははっ」
やはり現実感がない。そのせいか、少し驚いただけでパニックにもならない。私はひとまず救急車を呼ぼうとスマホを手に取る。そして、119とタップしようとした時、
「信じてくれるだろうか」
ふとそう思う。この状況をそっくりそのまま説明しても信じてはくれないのではないか。悪戯と思われてまじめに受け合ってはくれないのではないか。そう思うと電話をしても意味が無い気がして、スマホを閉じる。どうしたら良いのか。途方に暮れていると、このままでは友人との約束が果たせないではないかと気付く。私は友人に電話をかける。2回のコールの後、
「もしもしぃ」
とこれまた可愛らしくない声が聞こえて来る。私は事情を説明する。友人はまだ半分寝ているのか
「ふうぅん」
と気の抜けた返事をするばかりだ。話終えると友人は
「じゃあ、警察に電話したら」
とふにゃふにゃした口調で言う。私は訊き返す。
「警察? 救急車とかじゃなくて」
友人は
「そだよ、ニュースでやってたじゃん。体が盗まれた人が居るって」
としっかりとした口調で言う。体を盗まれる? そんな話は初耳だ。まぁ、私がニュースに疎いからだろうか。私は
「分かった、ありがとう」
と礼を言う。友人は
「いやいや。じゃ、おやすみ」
と言うと電話を切る。友人が言った通り、警察に電話をしてみようか。と考えながらふと低いテーブルを見ると、見知らぬ封筒が置いてある。昨日までは無かった物だ。私はその封筒を手に取る。開けるとA4サイズの紙と鍵が入っている。紙には定規で書いたかの様な直線でカクカクとした字で
「お前の脚はもらった」
と書かれている。
「これは」
私の脚は友人の言う通り盗まれたと言うことか。私はスマホを手に取った。
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