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するとその時、隣にいた父が口を開く。
「流れ星の正体は砂粒みたいな小さなチリなんだよ。それが地球の大気とぶつかる時に高温になってあんなにも明るい光を放つんだ」
「そんな話、子供にはまだ難しんじゃない」
諭すように母が言う。
「なぁに大丈夫さ。この子は俺たちが思っているよりも利口だよ」
優しく父が微笑みかける。
どうやら褒められているようで少女は嬉しくなる。
しばらくみんなで流れ星を眺めていると不意に母が言った。
「流れ星が消えるまでにね、お願い事を3回できたら願いが叶うって言われているのよ」
「そうだな。せっかくだからみんなで何かお願い事でもしようか」
その後、親子3人は静かに目を閉じ、そっと祈るように願いを口にした。
◆
そうだ。
あの日、魔法が使えるようになりたいってお願いをしたんだ。
それはまだ親子3人で幸せに暮らしていた頃の大切な思い出。
結局あの日の願い事が叶うことは無かった――。
遥か彼方を流れる星を見つめていた少女は、もう一度お願い事をしてみようかなと思った。
でも次は叶いそうな小さなお願い事にしよう。
そうしたら叶わなかったとしても悲しみは小さい。
あの日と同じように目を閉じ、「明日も何かいい事がありますように……」と呟く。
明日も食べるものがあって、いろいろな危険から身を守る事ができて、その中にちょっと嬉しい事があればそれで十分。
それ以上の事を望んだりはしない。
だから今度こそは叶いますように――。
そうやって3回唱え終えたところで少女は目を開ける。
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