天空の竜とナーガ

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ナーガはその本を手に取った。 黄土色の表紙にタイトルと作者の名が装飾文字で書いてあるだけの味気ない装丁だった。 …方法論的なものかな?… パラパラとめくって見た。 どうやらノンフィクションだ。作者はある貴族の従者だったが、何かの戦がきっかけで主人を失い、次に仕えるべき主人を探して国内を探して回った。その体験をまとめたものらしい。 面白そうだ。 ナーガは本を買った。 実は、ナーガはある人物の従者になりたくてこのロストークに来た。 主人と決めているのは、本来ならこの国の王となる人物。 『本来なら』だ。 訳あって、存在すら消されている王太子だ。 つまり社会的にはなんの存在価値も無い訳で、そのような人物の従者になりたいなど、到底おかしな話だ。 しかし「絶対にその方にお仕えしたい」のだ。 その人物とは セレシュヤーデ・スィン・ハティアス・カナーン・ランディール と言う。『ランディール』とは王家の姓だ。 『訳』とは簡単に言えば、虚弱に産まれた為だ。 セレシュヤーデ。通称セレ。 彼は生まれつき心臓が悪く、王位は継げないと判断された。その後、弟が産まれたが、ロストークには第一王子にしか王位継承が認められないのでセレは最初からいなかった事にされた。
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