天空の竜とナーガ

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天空の竜とナーガ

「ん?」 ナーガは本屋の前で足を止めた。 ここは商店街の一角。 商店街、と言っても、市場の雰囲気が色濃く残る。店舗を構えている店もあるが、地べたに敷物を敷き天幕を張って、かごや木箱に商品を並べるだけの露天商の方が多い。 しっかりとした屋根と壁がある屋内に商品が並ぶ店舗も良いが、色鮮やかな果物や民芸的な装飾品などは、露天の方が見映えがして良い、とナーガは思う。 少なくなったとは言え、まだ魔法使いや魔獣が生きている、そんな時代だった。 商品と言っても、自然の恵みそのものか、それにほんの少しだけ人の手を加えた物ばかりだ。 それでもここに来れば、食料や衣料だけでなく日用品、薬、楽器や文具や本も、日常生活に必要な物、プラスちょっとしたこだわりの品までほぼ揃う。 この国ロストークは大国ではないが、先進的な文化を持っていた。 この商店街はロストークの王都に近い場所にあり、他では見られない珍しい物もそれなりに売られている。 特別に用事が無くても、ここを見て廻るのがナーガは好きだった。 今日もふらっと立ち寄っただけなのだが、とある露天の一冊の本が目に付いた。 『賢い主人の選び方』 …ふーん。どんな事が書いてあるんだろう?…
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