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貴公子と王様
その人の噂を聞いたのは、確か、学校に上がったばかりの年で七歳の頃。
他校に、貴公子の引けを取らない奴がいるらしい。
友人から面白げに聞かされた時には、だからどうしたと思ったし、実際、そう口にした。
「なんだよ、冷めてんなぁ。どんな奴か、会ってみたいとかないのか?」
「別に」
「ミカルって、人の心を読みまくるくせに、あんま、他人に興味ないよな」
「自分のことで精一杯だからだろ」
「うわ、うそくさー」
スメラギ ミカルという子どもは、物心がついた時から「何か企んでそう」「笑顔が嘘臭い」「出来すぎる」等々と言われ放題で、ついたあだ名は大した家格でもないのに貴公子だった。
自分では要領がいい方だと自覚はあれど、それ以上でも以下でもないと考えていた。
幸い、こんな性質でも友人は多かったので、何を言われようと気に病んだことはない。
そんな淡々とした調子を狂わされる出逢いが発生した時には十歳になっていた。
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