389人が本棚に入れています
本棚に追加
夕食を済ませ、交替で風呂に入る。
これまでは謙太が先だったが、最近は後でいいと言って譲らない。どちらでも構わない龍之介は特に何も思わず先に入った。
謙太は入浴の度に自慰をするようになっており、匂いやら何やらでバレないように入る順番を後にしていた。
風呂上がりに軽く掃除して痕跡を消し、抜いてスッキリした状態で寝る。これならベッドで多少龍之介に触れても反応しなくなるからだ。
先ほど不審者らしき男を捕まえて問い質している龍之介の姿を見た時は驚きで胸が潰れそうになった。
もしあれが本物の不審者だったら危険だ。
ナイフを持っている可能性もあった。
もし龍之介に何かあったら。
そう考えただけで全身が粟立つ。
龍之介は男で、守られる側ではない。怪しい人物を見れば躊躇なく向かっていくような性格だ。以前気を付けるように伝えてもこれだ。似た状況に遭遇すればまた同じことを繰り返すだろう。
さっきは思わず念を押すついでに抱き締めてしまった。
流石に不審に思われたかもしれない。
邪まな思いを抱いていると勘付かれたかもしれない、と謙太は自分の迂闊な行動を後悔した。
でも、龍之介を失う恐怖の方が大きくて止められなかった。
──俺はリュウが好きなんだ。
たぶん、ずっと前から。
友人としてではなく、恋愛対象として。
一度自覚してしまえば歯止めがきかなくなる。
正直に打ち明けて早く楽になりたい。
この生活に完全に慣れて抜け出せなくなる前に。
謙太はようやく覚悟を決めた。
最初のコメントを投稿しよう!