第4話・やっぱり自覚が無さ過ぎる

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 急に人の家で一人にされ、龍之介は部屋の中を見回した。  いま座っているのはリビングだ。  カウンターの向こうにキッチンがあり、冷蔵庫や造り付けの食器棚が見える。動き始めの乳幼児がいるからか室内は片付いていた。  部屋の壁には結婚式の写真や陽色が生まれた時の写真が可愛らしい額に入れて飾ってあった。歩み寄り、写真に手を伸ばす。 「なんで大事にしないんだか……」  絵に描いたような幸せな夫婦だったのに、と龍之介は思わずボヤいた。  更に見て回ると、部屋の隅に陽色のための絵本やおもちゃを片付けるための専用の棚があった。その一番下の段に紙オムツやおしり拭き、子どもの手が届かない上段には、爪切りや綿棒などの細々とした乳幼児用のお世話セットを発見した。  とりあえず数日保つくらいの在庫はある。 「ただいま〜」 「……おかえり」  そうこうしているうちにコンビニに行っていた謙太が帰ってきた。両手に下げているビニール袋はパンパンだ。 「オレもメシまだだったし、弁当買ってきた。好きなほう先に選んで」 「おう、サンキュ……そっちの袋は?」 「久々に会ったから飲み明かそうかと思って」  なんと、もう片方の袋には缶ビールや缶酎ハイ、おつまみなどが入っていた。  得意満面でローテーブルに缶を並べていく謙太に、龍之介はわなわなと肩を震わせた。感動しているわけではない。呆れを通り越して怒りが湧いているのだ。 「──こンの馬鹿ッ! 二人で酔い潰れてる間に陽色になんかあったらどーすんだ!!」 「え、でも寝てるし」 「夜中に熱出したりとかあんだろ!」 「……? ……、ああ!!」  言われるまでその可能性に思い至らなかったようである。  やはりコイツに任せてはおけない。  謙太の性根を叩き直し、父親の自覚を持たせてやると龍之介は心に誓った。
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