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第33話・堂々巡り
謙太の言葉を信じられるほど龍之介は単純ではなかった。彼の過去の経験が全てを拒む。また捨てられるかもしれないと怯えるくらいなら最初から受け入れなければいい。
一生独りで生きていく。
それが龍之介の選んだ道だった。
「子どもだけが家族の絆じゃないだろ」
「子どもが原因で離婚する予定の奴に言われたくないね」
「ホントだな。説得力ないわオレ」
「ケンタの癖に物分かりがいいじゃねーか」
「今までなんだと思ってたんだよ」
「………………バカ?」
「想像以上にディスられてる!」
真面目な話からいつもの掛け合いに移り、二人は声をあげて笑った。笑い過ぎて目の端から涙がこぼれる。ひとしきり笑った後、冷静に戻って気まずい沈黙が流れた。
「でさぁ、おまえは結局どうしたいわけ?」
「どうって……」
「寂しさを舐め合って、男二人で仲良く暮らそうってか?」
「うん、まあ、そうなるかな」
「否定しろよ」
「いや、だって実際リュウと暮らしたいし」
「…………はあ〜〜……」
深く長い溜め息を吐き出して、龍之介はガクリと肩を落とした。何をどう言おうと謙太は譲りそうにない。堂々巡りだ。
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