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「狭い」
「文句言うなら床で寝ろ」
「すんませんでした」
龍之介の寝室にあるのはセミダブルのベッドだ。一人ならこれで十分だが、男二人で寝るには狭い。それでも謙太の家の客用布団よりはマシだ。肩はくっつくが、なんとか並んで仰向けにはなれる。
「そういえば、おまえ一度自宅に帰ったんだろ? なんで着替えのカバン持ってきてんの?」
「リュウんちに泊めてもらおうと思って」
「最初からそのつもりで来たのかよ。……はあ、信じらんねえ。馬鹿じゃねーの」
「電話通じないしドア叩いても出てこなかったから焦った焦った」
もし龍之介が不在だったり宿泊を拒否されたとしても、その辺のホテルに行くか自宅に帰れば済む話だ。しかし、謙太はそうはしなかった。
「おまえ、もしかして一人で寝られないのか?」
「確かに実家では眠れなかった」
「……、……そっか」
今回の件で謙太も深い傷を負った。そう考えると何だか気の毒に思えて、龍之介は謙太を蹴落とそうとしていた足を引っ込めた。
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