第33話・堂々巡り

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「まあ、親と話してたら夜が明けただけなんだけど」 「なんだそりゃ」  前日の夜から実家に帰ればそうなるだろうと分かって送り出した。先に身内と今後の方針を擦り合わせておかないと話し合いが進まなくなってしまうからだ。  逆に、そのせいですんなり話し合いが終わったとも言える。良かれと思って早めに実家に行かせた結果がコレだ。 「母さんと父さんは陽色(ひいろ)に会えなくなるのは嫌だから絶縁だけはしないでほしいって譲らなくて。前々から寧花(ねいか)に頼んで写真いっぱい送ってもらったりしてたらしい。オレの子じゃなくても、もう関係ないってさ」  初孫だと信じて陽色と接してきたのだ。愛情も愛着もある。血の繋がりがないからといって今さら赤の他人には戻れない。戸籍の話や子連れ再婚での虐待の可能性云々は主に謙太の母親からの入れ知恵だったようだ。 「あと、リュウと暮らしたいって言ったら母さんにグーで殴られた」 「は? おまえ親に何言ってんの???」 「離婚した後どうする気だって詰め寄られたから、つい。そしたら『これ以上リュウ君に迷惑かけるな!』って」 「おばさんの言う通りだよ。早速迷惑掛けられてるもん。あーあ、布団狭いなー」 「でも、あったかいよな」 「…………そうだな。湯たんぽ代わりにはなるかもしれないな」  一緒にいるとあたたかい。  二人はいつの間にか眠りに落ちていた。
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