第34話・同居スタート

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 平日の夕食は龍之介の担当だ。  一人の時は適当に済ませていたが、今は同居人がいる。謙太は好き嫌いがなく、何でも美味いと言ってよく食べる。少しだけ気合いの入ったメニューにしてしまうのは、やはり一緒に食べる相手がいる嬉しさからだろうか。  お互いストレスになるのではと恐れていたのが馬鹿らしく思えるくらい、二人での生活は当たり前のように馴染んでいった。  皮肉なことに、離婚の話を会社にした途端に謙太は完全に残業と接待がない元の部署へと異動となった。もちろん離婚原因は伏せている。  新婚、それも子どもが生まれたばかりの社員に無理を強いたせいだと上司と人事部が責任を感じたらしい。  地方の中小企業にありがちな、新婚やマイホームを持ったばかりの社員に無茶な仕事を振る悪習。今回の離婚の直接的な原因はそれではないが、今後のためにもパワハラじみた慣習は無くなった方がいい。  おかげで謙太は毎日ほぼ定時で上がれるようになった。その代わり月に一、二度遠方への出張がある。 「オレ明後日から出張。二泊三日で仙台」 「ん、わかった」 「土産なにがいい?」 「仙台ってなにがあんの」 「んー……ずんだ餅とか、牛タン?」 「甘いものより肉かな」 「りょーかい」  他愛ない会話をしながら食事をして、龍之介が片付けをしている間に謙太が風呂の支度をする。風呂上がりに軽く晩酌をして同じベッドで眠る。  そんな日々にもだんだんと慣れていった。
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