第35話・独りの夜

2/2
前へ
/195ページ
次へ
 コンビニ弁当は二食目で早くも飽きた。  一人で買いに行き、一人で食べる。以前は好んで食べていたものが物凄く味気なく感じた。温め直してもどこか冷たい。それは、やはり一緒に食べる相手がいないからか。  謙太と話しながら食べる食事はなんでも美味しく感じられた。手料理やコンビニ弁当、買ってきた惣菜だとかは関係ない。他愛ない話をしながら食事をする時間が楽しかったのだ。  同居を始めて半月。  思った以上に謙太の存在は大きくなっていた。これまで一人でどうやって生活していたのか、何故平気でいられたのか分からなくなる。  夜。  夜更かしをする気力もなく、風呂上がりにアルコール度数高めの缶チューハイで晩酌をしてからベッドに入る。  いつもは狭いだの何だのと文句を言いながら二人で寝ているが、今夜は一人。龍之介はベッドのど真ん中で大の字になった。久し振りに伸び伸び出来る。  でも寒い。  足先から冷えていくような感覚があり、龍之介は身体を縮こまらせた。せっかく広々と寝られるというのに、無意識のうちに片側を空けてしまう。  謙太の枕を抱き寄せようとしたところで龍之介は我に返り、ベッド脇に投げ飛ばした。
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

387人が本棚に入れています
本棚に追加