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MIDORI MAYUMI NAOMI
俺は宿泊しているホテルオーシャンビュー最上階の最高級部屋からマリンブルーな海辺をひとり望む。
今彼女は屋上のプールで泳いでいるので居ない。
背後のテレヴィジョンから「11月29日午前11時22分に大韓航空機が謎の墜落をしました」とキャスターが連呼している。フランス語で…。
「ミドリ?ナオミ?MAYUMI?キム!?」
フランス語が聞きとれず、事件の真相が闇に葬られる。不意に来客は訪れるものでもある。
「ピンポーン」
「どなたですか?」
「RIEです」
はっきりと聞き取れた。
俺は恐る恐るドアを開ける。
「やっと見つけたわ」
「君は!」
国土庁の地価公示では、東京の住宅地や商業地の前年に対する上昇率は76%を超え過去最高を記録する時期でもあった。また、マルサの女というジャパーニーズ映画も流行り、バブルで熱狂する輩を取り締まる国税局査察部の職員も躍起になっていた頃でもあった。
俺の財産は全て没収され、追徴課税や重加算税も収めることとなった。
「君には丸裸にされたな。まんまと騙されたよ」
「私の演技、アカデミー女優級でしょ」
RIEの美貌とスタイリッシュさ、なによりもキュートな笑顔にはすっかり騙されっぱなし。
人見知りの自分が、こうして友達のように話せるまでになっていた。シンジラレナイていうか騙して儲けていたのはこの俺様なのだが…。(何様のつもり)
RIEは最後までクールであった。黒ずくめのスーツに胸には国税局のピンバッチ、シガレットケースからロングのメンソールを取り出し、長い指先で器用に燻らす。
静寂の中で、とある曲が流れる…「なんか、聴いたことがあるな。懐かしい」
SEA LINE ”RIE”
達観した…
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