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しかしサウザンドは長年疑問に思っている。学者たちの言っているモンスターは普通の動物説、なぜそんなに頑なに否定するのだろうか。解剖等の結果全く違う生き物だというのが世間で言われているが、解剖をしているのはすべて国が抱える学者たちのみ。民間人による解剖や調査が禁止されている。
「うお!?」
突然スノウが声を上げた。そして座っていた格好から勢いよく立ち上がると四本の足をぴんと伸ばして小刻みに震え始めた。
「大の方ですか」
「噛みつくぞ、ちげえよ。きたきた、何か体が暑い。多分いま精霊の力がちょっと強くなってきてると思う。着実に結晶化に向けて動きが出てるぞ」
何が起きているのかよくわからないが、戦うと精霊の血が騒ぎ本当に目的の事が行われているようだ。心臓に埋め込まれている道具とやらがどんなものかわからないが、とにかく戦えば良いということなのだろうか。おそらく血圧が上がったり興奮状態になると精霊の力が少し強まるようだ。
それもまた不可解なことだと思っている。精霊たちはそんなに戦いが好きな熱い性格だったのだろうか。
スノウの体が熱くなったのはほんのわずかの時間ですぐにおさまったようだ。再びちょこんと座ったスノウは尻尾をぶんぶん振って嬉しそうである。
「半信半疑だったがちゃんと結果を残せてるみたいだな。これで何もなかったらリズに文句言ってたところだ」
「あなたを殺す第一歩を踏み出せたというわけですか」
静かにそんなことを言ったサウザンドをスノウはじっと見つめる。自分の運命を受け入れているしサウザンドがどんな気持ちなのかもわかっている。わかってくれと強制するつもりはないが少しすり合わせをしておかなければいけない。
「嫌ならやめるか、俺の従者を」
するとその問いにはサウザンドはあっさりと首を振った。
「絶対にやめませんよ、僕の主はあなただと決めたんです。僕には僕の夢があります、それを叶えるためにもただ言われたことだけをやらされるのはちょっと性に合わないだけです」
「へえ? 何がやりたいんだよ、お前の夢ってなんだ」
その言葉にサウザンドは嬉しそうに笑った。スノウが見た自分の部下の初めての満面の笑顔だ。
「僕やあなたを蔑んで見下してきた連中を、見返してやるのがやりたかったことだったんですけどちょっと気が変わりました」
「何をやりたいんだ」
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