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モンスターの足の裏には、人が馬につける蹄鉄がしっかりと着けられていた。馬の蹄は実は弱いので蹄鉄をつけなければ割れたり足を痛めてしまう。つまり、このモンスターは。
「本当に馬だったってことか」
「それも野生の馬ではなく明らかに牧場など人が手入れをしていた馬です。この世にモンスターの足に蹄鉄をつけるのが趣味の人間がいない限りは、ですけど」
「……」
チラリとサウザンドの顔を見れば、意外にも驚きや戸惑いの表情は浮かんでいない。
「驚かないのか」
「僕は国の学者が言ってること信じてませんし。どこからモンスターが出てくるんだろうって考えたとき、やっぱりもともとは動物だったんじゃないかって考えを結構推してます。だってそうじゃなきゃおかしいじゃないですか、あれだけ大々的に討伐をしてこれだけの数の討伐部隊があるのに絶滅しないんですよ、モンスター」
討伐隊を総括しているのは国、モンスターの調査をしているのも国、民間人の独自調査は認めていない。モンスターの死骸は自分たちで処置をしたり放置をしたりせず討伐隊に提出することが義務付けられている。
しかし討伐隊も結局は死骸をまとめて処分したり、時には国に提出をしているという話なのでモンスターに関しては全て国が実権を握っている。普通に考えれば胡散臭いことこの上ない。しかも動物を使っていまだにこそこそとよくわからない実験を続けているのだ。
「国は当然この事をわかっていて、何か事情があって広まってほしくないからそれを必死に隠してるってことか。とりあえずこの情報むやみやたらに漏らすんじゃねえぞ、命がいくつあっても足りねえ」
「わかってます、どうせ口に出したところで誰も信じないしあいつらとうとう頭もおかしくなったんだなって言われるのがオチですから」
そんな会話をしながら町へと戻る。モンスターすべてが動物の変わり果てた姿だというつもりはないが、動物がモンスターになってしまっているのはおそらく事実だ。まだ決めつけるわけにはいかないが、おそらく……
(実験をされた動物たちの成れの果てというのは充分あり得る)
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