討伐開始

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 そんなことを考えて改めて自分の主を見つめる。そんな存在にさせないためにも悠長に戦いを繰り返すわけにはいかない。結晶化の実験を続けることがモンスターになってしまうというわけではないだろうが、少なくともこのまま続ければ主の命は確実に失われる。具体的に何をしなければいけないのか考えなければ。主が自分の運命を受け入れてしまっている以上彼を説得するのも難しいかもしれないが。それなら彼がこの実験を辞めて別の道で生きようという活路を見出せることを見つければいい。  サウザンドは自分の性格は後ろ向きではないと思っている。どうせ何をやってもダメだとか、どうしたらいいんだろうなどという他人任せな考え方をして自分の人生を決めるつもりはない。どうすれば自分が主導権を握れるのか、自分は何をすべきなのか、そうやって考えて生きてきた。周りから蔑まれ見下されてきたからこそ培ってきた考え方だ。ひねくれるのは簡単だがそんな生き方をして楽しいわけがない。 (さて、一筋縄ではいかなさそうなヒトだからな、どうやって運命を変えていこうか)  どこが楽しくなりながら、これからのことを考える。後先考えない無茶苦茶な性格ではあるが確かに自分との相性は抜群に良いのではないかと、自分の主として迎え入れることができたのもサウザンドは嬉しく思っていた。  施設に戻りさっそくリズにスノウの体調を確認してもらう。何かの道具をスノウの体に……心臓の上に当てて調べると、リズは頷いた。 「確かに、ほんの少し濃度が上がっているようです。このまま進めてもらって大丈夫です。ところで具体的にどのような戦い方を?」 「噛みついた」 「物干し竿で襲い掛かりました」 「今の時点ではスノウに軍配が上がります」 「やったぜ」  意味不明な勝負に勝ったスノウは満足そうだ。サウザンドが鞄から取り出した二本の棒には生々しく血がついている。それを見たスノウはグリンと顔を背けた。 「相変わらず血が苦手なんですね貴方は、慣れて下さいと言ってるでしょう。それにしても、この棒何か術式を施していますか?」 「いえ特には」 「……前代未聞なのでどう報告書をまとめたものか」  頭を抱えそうなリズに今後も活動を続けていきますと告げてサウザンドはスノウと共に施設を出た。
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