討伐開始

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 施設は自由に使っていいが魔の森から少し遠い、森に近い宿舎などに住むのがいいだろう。サウザンドは役場から許可もらい町のはずれにある、森からもほどよく近い無人の小屋を使うことにした。雨風をしのげる程度で便利な物はほとんどないが、眠ったり食事を準備するには充分だ。以前は人が住んでいたらしいが森に近いということで住民は出て行ってしまったらしい。  今のところ自由に使えるお金もほとんどないのでサウザンドの武器はそのまま物干し竿となっている。 「これからの作戦を立てる前に確認しておきたいことがあります。主、精霊の血による特殊な力は本当に何もないのですか」 「いろんなテストやってみたけどなーんも」 「それが本当なら不可解ですよ。本当に何の力もないのなら主が精霊の力を高め結晶化する意味がないということになってしまいます。精霊の能力の種類は多種、結晶化する以上はその力を利用したいということでしょう。何もない事をやるとは思えません、必ずあなたには何らかの力があるはずです。そしてそれを施設の人間は絶対に把握しています」 「言われてみたら確かにな。これから力が高まっていくとわかるってことか」  魔術と違って破壊活動などはあまりなく自然の流れなどを管理する力。嵐をおさめたとか川の氾濫を鎮めたとか、強い精霊の力は様々な逸話が伝えられているが同じ力を持つ者はあまりいないという印象だ。 「先程の戦いでこれなんじゃないかって思うものを一つ思いついたんですけど。主、モンスターの喉に噛み付いて相手の力はだいぶ弱めましたよね」 「おうよ、俺の顎バカ強いだろ」 「モンスターの再生能力は普通の生き物の数倍あるのはご存知ですか」 「馬鹿にすんじゃねえ、知ってるに決まって……あれ?」  サウザンドが何を言いたいのかようやくわかったスノウは首をかしげる。その姿はなんというか、話している内容にまったくそぐわずに可愛らしかった。 「噛み付いただけで致命傷になるわけねえな。なんで俺たちアレを倒せたんだ」 「トドメは僕でしたけど、致命傷は明らかに主でした。結論から言ってしまえば主に怪我を負わされたモンスターは傷を再生できないのでしょう。加えて弱ってしまうほどに何らかの影響がある。それこそが精霊の能力なんだと思います」
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