主従

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 真剣な表情でそう聞くとリズは一瞬黙る。サウザンドの目から見てもスノウには首に取り付けられている道具以外何かあるようには見えない。つまり体の中に埋め込まれているということだ。当然だ、結晶化を促したいのなら血液が循環するところに取り付けなければいけない。そして血液が最も集中する場所など。 「その道具、心臓に埋め込まれているんですよね。そこから道具を取るという事は、最終的に僕の主人は殺されるという認識で合っていますか」 辺りが静まりかえった。リズは言葉を選ぶようにゆっくりと口を開こうとしたが、先に口を開いたのはスノウだった。 「その通りだ」 「主人」 「その主人っていう呼び方やめろ、なんかダセェ。後で考えるか。それはともかく、今お前が考えた内容は俺が生まれた時から決まってたことだ。俺もさんざん説明を受けている。はあ~、馬鹿なやつだったら素晴らしい実験に参加できて光栄ですとか言ってそのまま討伐に行きましょうとか言うんだけどな。お前ホントに冷静なんだな」  スノウのしゃべる様子に悲壮感は無い。無理をしているわけでもない、すべてを受け入れているのだ。それこそが自分が生きる理由なのだということを受け止めている。 「俺以外の奴もこの実験は過去何十匹もやってきた。条件を変えれば結晶ができるんじゃないかっていうところまで来てる、俺を含めてこの実験に参加してるのは大体二十匹だ。誰が早く成果をあげるか競争しようぜってみんなで約束したからな」 「……」  未来のない必ず殺される運命しかないというのにそれを誇りに思っている動物の主人たち。他に生きる道があったのならそちらを選ぶこともできるのだろうが、彼らには他に生きる道など許されていない。生まれてからそういう施術をされたのではなく、その目的のために生み出されたのだから。 「とりあえずやることはわかったぜ。さて、そろそろ行くとするか」  サウザンドは何も言わないままリズに深々と頭を下げてスノウの後に続いた。言いたい事は山ほどあるがリズ個人に言っても仕方がない。それに自分だって似たようなものなのだ。他の生き方を選ぶことなんてできない。 「とりあえず俺の呼び方な。給仕がご主人様って言ってるみたいで気持ち悪いから、そうだな。……陛下とか」 「(あるじ)って呼びます」 「まだ最後まで言ってねえだろうが、しかも俺の意見無視かよ」 「お会いした時からうすうす思ってたんですけど。センスとかが割と残念な感じなので、何か違うなと思ったら僕のやりたいようにやります」 「なんだとゴルァ!?」  そんな会話をしながら向かっているのは目的地である魔の森だ。与えられている役割はとにかく成果を出すこと。下準備に時間をかけても仕方がない、さっさと行くぞとスノウが森に向かって歩き出したのだ。
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