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大好きなあの子の寝顔が目の前にあって、
(村野井?! なんで)
って大混乱を起こした時にはもう、俺は身体を動かせなくなっていた。
村野井のあたたかな両手で、しっかりと固定されているからだ。
というかこの子より大きいはずの全身のサイズ感は、妙に小さい。
両腕を上げたまま下げることができなかったので、
(あ、もしかして、俺があげたぬいぐるみ?)
ポーズ的に、中身に憑依している? と思い至ったのは、部屋の暗さと村野井のおだやかな表情に、見慣れてきた頃だった。
ぬいぐるみだから、長袖パジャマの寝姿を、まばたきせずずっと見ていられる。
ドキドキ、ドキドキ、言い続けている心臓も、たぶん聞かれていない。
目を閉じたままの村野井の唇がかすかに動き、少しうねった長い髪がぱさ、と俺の顔に降ってきたあと、
互いの間から、明るくしゃべる女の人の声が流れ始めた。
(イヤホンか! びっくりしたぁー)
ピンク色のイヤホンが片方、あの子の耳から零れ落ちたんだ。
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