9人が本棚に入れています
本棚に追加
『それで、Cのタロットを選んでくれた人。お相手さんの、好きなタイプというのはー……』
タ、タロット占い……?!
寝息と同じくらいひっそりと、イヤホンは相性占いらしき動画の、診断結果を流し続ける。
女の子すぎるだろ、村野井!
「……ん、はいたくん」
返事をしたかと、思った。
元々動かせない身体なのに俺は、すうすうとよく眠る姿に、胸が締めつけられている気がした。
(こんな風に呼ばれたから、俺、ここに来たのかな)
下の名前、ゆうすけ を口にされなくてよかったと思った。同じ名前は他のクラスにも何人かいるし。
兄キだらけの中で育った俺が、高校入って、生まれて初めて目が離せなくなった女子が、村野井で。
スマホの連絡先をどうにか交換した時も、話を終わらせたくなくて、
『俺を呼べ! いや、いつでも呼んで!!』
全然かっこいい、やさしい言い回しができなくて。
困った時とか、
なんか切ない時とか、
とにかく俺のことを呼び出していいって、言い訳みたいに付け足した。
ぬいぐるみだってそうだった。
本屋に寄って帰るっていう村野井に、無理やり用事をつくった俺は、ついていった。
最初のコメントを投稿しよう!