ある、初夏の日に

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ある、初夏の日に

 不思議なことに、両腕を上げたまま身動きがとれない。   ベッドより高い位置にある、窓際の段に私は座っているらしい。拝田くんは明かりの落ちた部屋で、半袖シャツと短めのズボンを着て、泳ぐように眠る。 (ああ、タオルケット、治してあげたいっ)  自由な寝相の上から、ずり落ちかけた唯一の掛け物。  彼がお腹を冷やさないか、風邪を引かないかとてもそわそわしたけれど、どんなにがんばっても指一つ動かすことができなかった。    というか、私のしているポーズって、いつも一緒に寝ているぬいぐるみそのもの?  拝田くんも同じの、持ってたんだなぁ……   (なんだか、たのしい夢)  私はちょっぴり、心の中で笑顔になっていた。  春の終わり頃から、拝田くんは学校で、私とは緊張ぎみに話す日が増えた。  何気ない内容でもしゃべりかけてくれて、自分にとって安心できる、数少ない男の子だったのに。   彼は赤くなって、目を逸らしたり。  会話はしてくれるんだけど、やたら短かったり。  態度が変化した理由はよくわからない。でも、本音を言うとさみしかった。 
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