ある、初夏の日に

2/3
前へ
/7ページ
次へ
 何か私が、気に障る接し方を、したのかもしれない。  なのに拝田くんは、土日はバイトで忙しくても、よくアプリの返事はしてくれるし……  寝る前の習慣になりつつある、恋占いのできる無料動画をうきうき聞いていたら、いつの間にか、こうやって彼を近くからながめていた。  相手の気持ちはわからなくても、私は今の大切な時間を、ほほ笑んで過ごそうと決めた。  ううん、息づかいを聞く限り、鼻、つまってる気がするぞ……  でもどことなく、うれしそうに笑っている風にも見えるなぁ……  久しぶりの近距離で、それも、貴重な寝ている姿を見せてもらっているわけだから、ちょっとずつたのしくなってくる。 (!)  仕草に夢中になる中、心臓のドアを、急に強く叩いたのは、拝田くんのあるひと言。 (むらのい って今、呼んでくれたの?)  ほんの偶然かもしれないけれど、私自身には、普段通り苗字を呼んでくれたように聞こえた。  カーテンが無造作にあいていて、月明りが充分差していた室内。  ほんわか、幸せ一色だった心にたちまち、胸の高鳴りが混ざり込んでくる。 
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加