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「珍しいか、ホームパーティ」
「拓也」
隣に並んだ拓也が陸に話しかける。
「まだ夢みたいなんです。いまだに起きて隣に拓也がいるのが信じられないし、こうして空や海と再会できたことも」
「そうだな。僕も時々地下にいたときの夢を見る」
「そうなんですか」
「起きたら隣に君がいるから、安心してる」
優しく微笑む観月に、陸も同じように微笑み返す。
「僕は、この風景こそアンドロイドと人間の共存だと思っている」
「そうですね、みんな楽しそうです」
「キングに教えてあげられたらよかった」
海外へ逃げたらしいハダリ―の主宰キングは結局、見つかっていない。警察の機動隊が地下に突入した時点で、もう失敗を感じていたのだろう。今となっては誰もわからない。
「彼のしたことは褒められたことではないけれど、彼がいたから僕は君を棄てずに済んだ。僕はそれだけは彼に感謝しているんだ」
「それでいいと思います」
あの日、棄てられなかったから今がある。それは紛れもない事実なのだ。
「拓也、ありがとうございます」
「なんだい、急に」
「僕を作ってくれてありがとう」
「なんだ、そんなことか。お礼をいうのは僕だよ」
「え?」
思いがけない言葉に、陸は拓也の顔をのぞきこむ。
「君が今の僕を作ってくれた。君が僕をアンドロイド技師にしてくれた」
「僕ができる前から、貴方は立派なアンドロイド技師ですよ」
「じゃあ、お互い様なのかな」
「はい」
陸は隣の観月の手を取り、ぎゅっと握った。
「そこー! イチャイチャ禁止!」
遠くから海に指をさされ、ひっ、と陸は肩をすくめた。
「手伝ってきなさい、陸」
「はい」
背後に視線を感じながら、空と海の元に陸は走った。
大好きな兄と二人の大切な人たち、そして技術者も合わせて人間もアンドロイドもいるこの空間で、みんなが楽しそうに笑い合っている。
人間に恋したアンドロイド、アンドロイドに恋した人間、そしてアンドロイドに恋したアンドロイドもいる。彼らは自分が何者でも、お互いを尊重している。
貴方が作った僕のはなしは、まだ始まったばかり。
これが理想の世界だと左手の薬指の愛の証がキラリと光った気がした。
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