第2章:この気持ちに名前を付けるなら

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「ねぇ、りっきゅん。みづきゅんは元気?」 「みづきゅん……ああ、博士のことですね? ええ、最近、メンテナンスで会いましたが元気でした」 「りっきゅん、みづきゅんと会えないの寂しくない?」 「博士は忙しいですからね」  以前は毎日のように身体を診てくれたが、今では週に一度顔を合わせられれば、いいほうだ。なのでメンテナンス日は唯一、観月を独占できる時間でもある。 「ねぇねぇ、二人のとき、みづきゅんとどんな話するの?」 「えっ、そんなたいした話はしてないですよ。僕がみんなのことを話したり、ほとんど博士は聞いてるだけで」」 「でも、みづきゅんをメンテするのってりっきゅんだけなんでしょ? それって特別ってことじゃない?」 「それは僕を作ったのが博士だからってだけの理由です」 「本当にそれだけ~?」  アイが陸の顔を至近距離でのぞきこむ。 「それ以上のことはないですよ」  過去、実験という名目でなら、それなりにいろんなことを経験したが、変な誤解を招きそうなので話すのはやめておいたほうがよさそうだ。 「私も気になってました。陸は、観月博士のこと、どう思ってるのですか?」 「え、ペッパーまでなんですか」 「ほらほら、みんな気になってるんだよぉ」 「ですから、僕を作った人だという以外は特に……」 「そうじゃなくてぇ、りっきゅんが、みづきゅんを好きかどうか、ってこと!」 「アイ、なんてこと聞くんだよー!」  止めているようでなんだかルイも楽しそうだ。どうも、この二人は若者のノリが移植されているようで、時々、こんな風に地下の住民のことも噂したりしている。 「そういえば、君たちのシリーズは主人登録をしていないと恋愛感情が発動するって聞いたことがあります」 「ソルト、それは本当か?」 「陸先輩、観月博士は主人じゃないんですよね」 「えっ、まぁ、たしかに僕の主人登録は空白ですけど」  そもそも陸はトニー社以外に出たことがなく、寄贈されたこともないので、主人登録をしていない。  当然、恋愛感情なんて自分は持ち合わせていない。
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