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「陸さん、いらっしゃいますか?」
「はい、ここにいます」
急に飛び込んできたアンドロイドに名前を呼ばれ、陸は手を上げた。
「今、陸さんと同じシリーズのアンドロイドが発見されたってニュースが流れてます」
「えっ」
自分と同じシリーズというのは、空と海だろうか。
「陸、行ってみましょう」
「はい」
「わあ、それはすごいニュースだね! 行こっ行こっ!」
テレビのある隣の休憩所にローラスケートで滑っていくルイとアイを追いかけるようにして、陸も休憩所に向かった。
陸がテレビの前にいると、アンドロイドたちがテレビを囲んで騒いでいた。
「あ、陸さん、こっちこっち!」
テレビを見ていたアンドロイドに手招きされ、陸は人混みをかき分け、画面の前に向かって進んだ。ようやく見えた画面には懐かしい顔がアップで表示されていた。
「空!」
空は陸と同じシリーズのアンドロイドで、以前、空の勤務先の介護施設から盗まれて行方不明になっていたはずだ。ニュースは、その空が火災にあったビルの地下で発見され、トニーエリクトン社により修復、その後、日本でも有名な時計職人の藤谷和時が買い取ったという内容だった。
画面は、同じシリーズの海が空を抱きしめて迎えている場面に切り替わった。そういえば最近、海も海中で筐体が発見され、復元されたと聞いた。
「すごいぞ。これで陸海空シリーズは全種類残っていることがわかったな」
「今でもニュースになるなんて」
「そりゃアンドロイドの一番最初の型だからな」
テレビを見ている周囲のアンドロイドたちが口々に驚きの声をあげている。確かに、リコールになってから二十五年経った今でもこんなに注目されているなんて今更ながら驚く。自分たちが「はじまりのアンドロイド」と言われるだけはあるのかもしれない。
「二人とも元気そうだ」
陸は抱き合っている二人を穏やかに見つめた。老いることのないアンドロイドは出会った当初そのままの姿ということもあり、当時のことがフラッシュバックした。
二人とはいつも行動を共にしていた。陸は二人よりも一ヶ月ほど遅れて完成したこともあり、二人は良き兄だった。甘えん坊な海、物静かで冷静な空、二人の間でいつも元気いっぱいだったのが陸だ。
あの場に自分もいたい。陸も生きていると知らせたい。でもそれは許されない。自分は溶解廃棄されたことになっているのだから、ここで登場するのは不自然で、もしかすると廃棄しなかった観月が罪を負うことになってしまいかねない。
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