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「ナイトジャック。もう我々には時間がありません。予定を繰り上げて三日後にテロを決行します」
「三日後? いくらなんでも早すぎる」
「人間にアンドロイドの脅威を思い知らせるにはテロ行為、すなわちアンドロイドによる無差別な破壊活動しかないのです」
陸は耳を疑った。三日後に無差別な破壊活動なんて、聞き間違いではないだろうか。
「そんなことは逆効果だと、僕は何度も申し上げています」
「貴方は指示どおりに動けばいいのです。貴方の開発した指令プログラムはとても優秀ですからね」
「実行は反対です。破壊活動を命じるために作ったものではありません」
「貴方の意見は必要ありません。黙って見ていなさい」
キングは二人の護衛に命じると、観月の両腕を掴み、捕まえた。
「拓也!」
その姿を見た、陸は思わず叫び、飛び出した。このままだと観月はどこかに連れ去られてしまう、と後先を考える余裕なんてなかった。
「ああ、聞いてしまったのかな。あの子は、君のお気に入りだったっけ? でもその口は塞がないといけないね」
「陸、逃げろ!」
拓也に言われ、陸はとっさにその場を去った。本来なら観月を守るために動きたいが、陸の脳内は「逃げろ」という観月の言葉を命令と解釈した。
「おまえたち、あの子を捕まえなさい」
キングの声が聞こて、陸は夢中で走った。あの二人の護衛は人間なので、おそらく陸自身の位置を特定するまでは、できないだろう。しかしそのうち警備ロボットが陸を探しにやってくる。仕事場に戻ったらだめだ。もし騒ぎになったら他のアンドロイドを巻き込んでしまう。逃げるとしても地上へ出る方法は知らない。しばらく息を潜めるにしても隠れる場所がわからない。
――僕がいる可能性が一番低いと思われる場所はどこだ。
陸は建物を大きくぐるりと回って、再び、観月の研究室に向かった。
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