第3章:ハダリ―の本当の狙い

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 キングの言い方だと、口封じに陸を探すだろうと思われたが、追っ手は陸に追いついて来なかった。もしかするとさきほどの破壊活動の準備とやらで、陸よりも先にそちらを優先しているかもしれない。  再び、観月の研究室の扉の前に立つ。研究室の灯りは消え、誰もいないように思われた。もう観月は連れ去られてここにはいないかもしれない。しかしここには観月の居住スペースがあるので戻ってくるかもしれない。研究室に隠れてて、戻った観月と接触できれば、さっきの破壊活動とやらをなんとかできるかもしれない。  僅かな可能性を考え、扉のノブを回すと鍵はかかっていなかった。これは、やはり観月は連れ去られたあとだろうか。不安になりつつも、暗がりを進む。  研究室の窓側にある机の下なら、陸一人くらいなら隠れられる。そう狙いをつけて、窓側に向かって歩いていたときだった。 「……んっ!」  急に背後から口を押さえられ、そのまま窓側のカーテンの裏まで引きずられる。しまった、捕まった、と思った矢先、陸は全身の警戒を解いた。なぜなら、陸を捕まえたのは、観月だったからだ。 「やっぱり戻ってきたな」 「拓也……!」  口元を抑えていた手が緩められた瞬間、陸は振り返って観月に抱きついた。観月が無事だったというその事実に心から安心したからで、思わず涙が溢れる。まずはこうして観月を確かめることができたことが嬉しい。 「大丈夫だから」  その気持ちを察してくれたのか、拓也は陸を抱きしめたまま、あやすように頭を撫でる。それだけのこの世の中のすべての不安から解放されたような安心感を得る。  ひっ、ひっとしゃくりあげていたが、徐々に落ち着きを取り戻した頃、ようやく抱きしめていた拓也の腕が緩んだ。 「陸、さっきの話、どこから聞いていた?」 「拓也の改造したアンドロイドが警察の手に渡って、何かの決行日を早めるってところまでです」 「そうか」 「あの、破壊活動ってどういうことなんでしょう。僕たちは廃棄されるアンドロイドを助けてあげてたのでは」 「陸」  観月は静かに人差し指を唇に添えた。静かに、という合図だと察した陸は速やかに黙った。陸の様子を確認した観月は、カーテンをめくって、陸の手を取り、そのまま研修室の奥の部屋へ歩いていく。  ここは観月の居住区で十畳程度の広さの部屋に、キッチンとリビング、そしてベッドが置いてある。こういう部屋があることは知っていたが、ここには初めて入った。
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