第4章:貴方の願いを叶えるために

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 それから陸は地下道を彷徨った。暗がりの中で朝か夜かもわからず、時には膝丈くらいの汚泥の中を歩いたこともあった。暑さや寒さは感じないものの、延々と歩き続けるのは慣れていない。ただ少しでも地下のアジトから離れていたほうがいいということだけは理解している。アンドロイドも人間も徹底した在籍管理が行われていて、いなくなるとすぐに捜索されるらしい。だが時々、壁に管理番号が欠番になった知らせが張り出されるときがあり、それは脱走した挙句、そのまま捜索隊によって処分されたと聞く。毎日、同じ労働の繰り返しに飽きて逃げ出すのだろう。もともとアンドロイドは不正改造されたものが多いのと、アンドロイドだけでは生きていけないことは自分たちが一番わかっている。だから逃げ出したいという感情は沸かない。  しかし、陸は先ほど、キングと観月の立ち話を聞いてしまった。ただ、あの優しそうで温和なリーダー、キングがそんな野望を考えていただなんて思いもしない。 『人間にアンドロイドの脅威を思い知らせるには、アンドロイドによる無差別な破壊活動しかないのです』  あのキングの言葉ですべての謎が解けた気がした。自分たちが今まで直してきたアンドロイドの数々は破壊活動のために集められたものだとしたら、いつか陸たちもそれに参加することになっていたことだろう。アンドロイドに屈するために人間の生活を脅かす。それは暴力行為だってあり得るのではないかと予想できる。それに観月が加担していたとは思えない。あの会話から察するに、観月は協力せざるを得なかったのではないだろうか。  一体どんな事情が――
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