第4章:貴方の願いを叶えるために

3/4

49人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
 陸は延々と歩き続け、ついに稼働時間残り八時間の警告サインが表示された。陸のシリーズは連続稼働が三十六時間と決まっている。地上に出てからも、土井光の所在地を探さなくてはいけない。そうなれば、地下に長くいすぎてもいけない。 「あの階段から上がれるかも」  視線の先に、壁に梯子のように添えられている階段を見つけた。きっと地上のマンホールに通じているはずだ。目標が決まると、足が早くなる。バシャバシャと水音をたてて、駆け寄り、階段を昇る。人間に近いように作られているせいか、疲労度もわずかながら蓄積され、自分の身体を運ぶ足が重く感じる。途中から丸い通路になり、ひたすら上に向かって昇る。そして手を伸ばし、突き当りのマンホールの蓋をぐぐっと押し上げると、それは思ったよりも簡単に蓋が動いた。  頬に風を感じ、僅かな隙間に指を差し入れマンホールの蓋をずらす。どうやら外は夜のようで、明かりはなく、静かだった。地上に上がりさえ、すればなんとかなる。力をふり絞って自分の身体を地上に這い上がらせた。  マンホールは住宅街の道路の真ん中だったらしいが、特に歩いている人を見かけない。電波をキャッチできたせいか、一気に情報が流れ込んでくる。時間は二十三時を過ぎて、現在地は計測中と表示される。  マンホールの蓋を元に戻し、ゆっくり立ち上がる。周囲を見渡し、立ち並んだ一軒家の中に、陸は見慣れた住居を見つけた。大きな敷地に殺風景なコンクリートで塗られた建物。周囲とは少し違う雰囲気の、見た感じ二階建ての建物がブロック塀で覆われている。 「僕は、ここに来た事がある?」  現在地を必死で解析するが、なかなか見つけられない。おそらく陸の脳内の地図が十年前のせいだろう。建物の入口を探していると、すぐ脇に正面と思われる門があった。のろのろと歩く。どうやら疲労が思った以上に蓄積されているのと、オンラインになったことで一気に体内電池が消費されたせいか、残り稼働時間がみるみる減っていく。 「まずい。ここで電池切れになって誰かに見つかっては困る」  周囲を見渡し、その門に近づくと、そこで独特の周波数をキャッチした。かつてトニー社が使っていた周波数、おそらくこの建物の中にはトニー社の関係者がいて、アンドロイド、もしくはアンドロイドの開発環境がある。 ――ここなら充電できるかもしれない。  問題は、敵なのか、味方なのか、ということだ。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加