第5章:幾数年の時を超えて

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 それから光は再び、陸の体を解析し始めたが、すぐに携帯が鳴り、部屋の外で出て、はぁ、とため息をつきながら戻ってきた。 「どうかしましたか?」 「陸、どうしてもおまえに会いたいと言って聞かないやつがいるんだが、ここに呼んでいいか?」 「僕に、ですか?」 「陸!」  突然、部屋の扉が開き、青い髪のアンドロイドが陸めがけて飛び込んできた。 「海!」 「わー! 陸、会いたかったよ、生きてたんだね!」  懐かしい兄弟の来訪に陸は、ぶわっと涙が溢れる。 「海、君も無事でよかった。海中から発見されたそうだね」 「うん、そうなんだ。光に直してもらって、今では毎日楽しく暮らしてるよ。陸のことも教えて」  海は片手で額を撫で、前髪を上げる。陸も同じように自分の額を見せ、そのまま二人はお互いの額を合わせた。陸の脳内に、海のこれまでの記憶がダイジェストに陸に流れ込んできた。前の主人とのこと、自分が海に棄てられる最期のこと、そして今のことも。 「拓也、生きてたんだね! すっかり大人になってるじゃん」 「廃棄される日に僕を連れ出してくれたのが、拓也なんだ。高校生の時の面影、全然ないんだよ」 「おい、拓也さんのことあんまり言うな」 「でも、拓也は僕と空には頭があがらないんだよ。いろいろ貸しがあるから」 「はぁ? なんだよ、それ」 「秘密。男同士の約束なんだもん」 「えー、教えてよ。僕も知らない」 「陸には絶対言えない事だもん。もし拓也と会えたら話していいか、聞いてみる!」 「ねぇ、海。あの……君にはアンドロイドの恋人がいるの?」 「あ、うん。そうなんだ。光は良く思ってないけどね」 「俺は、あいつをおまえの恋人だと認めてないからな」  光の言葉は、まるで海の父親のようで、思わず吹き出す。 「光、僕も陸の解析に付き合うよ。僕と比較したほうがわかることがあるんじゃない?」 「いいのか?」 「うん、直人から聞いたよ。僕に出来ることがあればなんでも言って。空もこっちに来るって言ってた」 「空にも会えるの?」 「うん。空は、今、グアムに行ってるんだけどもうすぐ帰ってくるよ。陸のことを聞いて、早く会いたいって言ってたよ」 「わあ、嬉しいな」  海に会えただけでなく、こんなにも早く空にも会えると夢みたいだ。  けれど楽しい時間は束の間だった。ちょうど同じ頃、ニュースではハダリーから声明文がマスコミ宛に送られていた。その内容は『二十四時間以内にアンドロイド法の改正を求める』というものだった。
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