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それから光は再び、陸の体を解析し始めたが、すぐに携帯が鳴り、部屋の外で出て、はぁ、とため息をつきながら戻ってきた。
「どうかしましたか?」
「陸、どうしてもおまえに会いたいと言って聞かないやつがいるんだが、ここに呼んでいいか?」
「僕に、ですか?」
「陸!」
突然、部屋の扉が開き、青い髪のアンドロイドが陸めがけて飛び込んできた。
「海!」
「わー! 陸、会いたかったよ、生きてたんだね!」
懐かしい兄弟の来訪に陸は、ぶわっと涙が溢れる。
「海、君も無事でよかった。海中から発見されたそうだね」
「うん、そうなんだ。光に直してもらって、今では毎日楽しく暮らしてるよ。陸のことも教えて」
海は片手で額を撫で、前髪を上げる。陸も同じように自分の額を見せ、そのまま二人はお互いの額を合わせた。陸の脳内に、海のこれまでの記憶がダイジェストに陸に流れ込んできた。前の主人とのこと、自分が海に棄てられる最期のこと、そして今のことも。
「拓也、生きてたんだね! すっかり大人になってるじゃん」
「廃棄される日に僕を連れ出してくれたのが、拓也なんだ。高校生の時の面影、全然ないんだよ」
「おい、拓也さんのことあんまり言うな」
「でも、拓也は僕と空には頭があがらないんだよ。いろいろ貸しがあるから」
「はぁ? なんだよ、それ」
「秘密。男同士の約束なんだもん」
「えー、教えてよ。僕も知らない」
「陸には絶対言えない事だもん。もし拓也と会えたら話していいか、聞いてみる!」
「ねぇ、海。あの……君にはアンドロイドの恋人がいるの?」
「あ、うん。そうなんだ。光は良く思ってないけどね」
「俺は、あいつをおまえの恋人だと認めてないからな」
光の言葉は、まるで海の父親のようで、思わず吹き出す。
「光、僕も陸の解析に付き合うよ。僕と比較したほうがわかることがあるんじゃない?」
「いいのか?」
「うん、直人から聞いたよ。僕に出来ることがあればなんでも言って。空もこっちに来るって言ってた」
「空にも会えるの?」
「うん。空は、今、グアムに行ってるんだけどもうすぐ帰ってくるよ。陸のことを聞いて、早く会いたいって言ってたよ」
「わあ、嬉しいな」
海に会えただけでなく、こんなにも早く空にも会えると夢みたいだ。
けれど楽しい時間は束の間だった。ちょうど同じ頃、ニュースではハダリーから声明文がマスコミ宛に送られていた。その内容は『二十四時間以内にアンドロイド法の改正を求める』というものだった。
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