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「いくらなんでも無茶すぎる」
ニュースを見ていた光がドンと机を叩いた。出かけた直人から、ニュースを見ろと言われ、ネットからライブニュースを見るとそこにはハダリーからの声明文が画面に表示されていた。
ハダリーが求めている法律の改正は三つ。一つ目は、時効廃棄義務の撤廃、二つ目は、アンドロイド単独での戸籍取得、そして三つ目は、アンドロイドによる自治区を作ってもいい権利だった。
「時効廃棄は確かに強制しなくてもいいかもしれない。しかし他の二つは、なんだ。アンドロイドが単独で生活するのは難しい。アンドロイドの自治区だなんて、誰が必要としてるんだ」
「ハダリーの主宰、キングが求めているのはアンドロイドと人間の共存だった。おそらく、アンドロイドの価値を高めようとしているんだろうね」
「ただでさえ、感情を持つアンドロイドが暴走したっていう歴史がある。それを俺たちトニーエリクトン社がどんな思いで改善してきたと思ってるんだ。父さんはきっとこんなことを望んでいない」
光の父は多額の負債を自分の遺産をあててほしいと責任をとる意味で、自ら命を落とした。博士の死は、肉親の光にとって思うところがあるだろう。
「人間から独立したがっているアンドロイドなんているんだろうか」
「少なくとも僕の知ってる仲間にはいません」
「ボクたちはそんなこと求めない。だってアンドロイドの幸せは主人の命令を聞くことだし、愛されることだもん」
「海」
陸はそっと隣の海の手を繋いだ。きっと主人のことを思い出しているのだろう。海は主人がいたことがあるから気持ちがわかるはずだ。
「僕だってそうです。拓也は主人ではないけれど、拓也の役に立てるのは嬉しい。それが僕の何よりの喜びです」
今度は海が陸の手をギュッと握り返した。
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