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第6章:二人だけの秘密
あれから何時間が経過したのだろう。陸と海が横たわる真ん中で、光は休むことなく、陸の解析を続けている。ただ、時折、光は何度も頭を抱えている。
「クソ……」
「光、さっきから苦しそう」
「ああ。基本的な性能を変えていない海と違って、陸はかなり他の型番の部品や回路、プログラムが使われてて、複雑になってるんだ。あの人の頭の中、どうなってんだよ」
どうやら観月が設計した陸の構造を見て、光は頭を悩ませているようだ。
「僕に何か、お手伝いできればいいんだけど」
「いや、いいよ。気持ちだけで充分だ。俺がふがいないだけ」
ははは、と笑う光だったが、その表情は悔しさが滲み出ている。やはり観月のレベルの高さは現役の技師よりも上回っているのだろうか。
「光、陸は、あの裏コード発動してないの?」
「裏コード?」
「ん、そういえば仲のいいアンドロイドや人間は何人かいるけど、ほぼ横一列で、特別な相手はいないようだ」
「えっ、拓也は?」
「うーん、それが拓也さんとの関係性を示すステータスコードだけは空白なんだ」
「それが裏コード、と呼ばれるものと関係がありますか?」
陸は首をかしげる。
「ボク、陸は拓也のこと好きだと思ってたから、もう発動してるもんだと思ってた」
「えっ、ちょっ……それ、いつの話なの、海」
「もう最初からだよ。陸、自分で気づいてなかったの?」
慌てて、ぶんぶんと首を横に振る。
「そういえば拓也さんってずっと独身だったなぁ。あまり顔に表情は出ないけど、優しいからそれなりに人気もあったけど、浮いた話はほとんどなかったし」
「光よりモテそう。直人くらい?」
「おい。なんで俺がモテない前提なんだよ」
「光がチヤホヤされている光景が想像できません。ボクのプログラムでは」
「それ、壊れてんじゃねーか?」
海と光の微笑ましいやりとりを聞いているのはいいのだが、陸はそれよりもさきほど話題に出た、裏コードというのが気になっていた。今までそんな話、一度も聞いたことがない。
そして『陸は拓也のことを好きだと思ってた』という海の言葉だ。ありえない。好きだなんて感情をアンドロイドが持つはずない。もちろんこれまでに出会った人々は脳内のデータベースに蓄積されていき、それぞれの関係性というのが数値化されている。その中で一番上の人はいる。今の陸にとってはペッパー、続いて、ソルト、そしてアイ、ルイと続く。
――拓也は?
ふと、気づいた。そういえば観月は順位の中に名前がない。
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