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「ねえ、海の担当技師は光なの?」
「うん、そうだよ」
「海の中で、光は何番目?」
「えっ」
「おい。本人の前で、聞くなよ。一番に決まってるだろ」
「いやあ……?」
海は光から、わかりやすく目を逸らす。
「ということは、担当技師でも好感度のランキングには一応、入るんだよね」
「うん、そうだよ。光は三番目」
「待て、三番ってどういうことだ。俺の上に誰がいるんだ」
光が明らかに取り乱している。
「え、直人だけど」
「は?」
「陸、それがどうかしたの?」
「う、うーんと、光……大丈夫?」
「いいのいいの」
光が、がっくりと肩を落として明らかに落胆しているのだけれど、それはいいのだろうか。
「僕の中に拓也はランキングに入ってきてないんだ」
「そんなことある? 付き合いも一番長いんじゃないの?」
「なんていうか、足らないみたい。拓也の記録が」
「確かにそれは俺も気づいてた」
落胆していたはずの光が、むくっと起き上がった。
「陸の記憶をつかさどるレコードが、時々欠落している。ただこれは削除されたのではないんだ」
「欠落と削除は違うんですか?」
「ああ、削除ならその部分の記録が繋がるはずなんだ。たとえば、陸は投棄されそうになった日の記憶がないだろう?」
「はい、ありません」
「削除された場合は、その記憶がないことも気づかない」
「おお、なるほど」
海が納得している。
「ということは、一部分隠されている、という感じ?」
「他に、ないと自覚している記憶はあるか?」
「そうですね……」
「陸、拓也との感度実験の記録はある?」
「感度実験……」
アンドロイドと人間の疑似セックスの実験のことだ。
「え、まさか、陸の感度実験って拓也さんがやったの?」
「そうだよー」
「俺なら自分が手がけたアンドロイドとセックスなんてできないぞ」
「ボクも嫌だな、光とは」
「おい、俺のテクニックを知ったら、おまえ、俺に惚れてしまうぞ」
「光、童貞じゃないの?」
「ど、童貞じゃねーわ!」
「ないです……」
「え?」
海と光が二人で騒いでいる相手に、陸は脳内データベースを検索していた。そして、気づいた。事件のときの記録の大半が残っていない。キスをしたという感触など、部分的なことは残っているが、実際の行為の部分の記憶はほぼないのだ。
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