第6章:二人だけの秘密

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「まぁ、俺だったら恥ずかしくて消したくなるけどな」 「うーん、拓也は光と違ってそういう記録は個人的感情では消さない気がする」 「俺と違ってってなんだよ」 「じゃあ、意図的に欠落させている?」 「確かにそれくらいしか、陸の身体で不自然なところがないんだよな」  観月がどうして陸の記憶を操作しているのかは、結局わからない。もちろん。この記憶が戻ったら、陸自身がどう変わるのかも、わからないのだった。 「光、あと一時間くらいで二十四時になってしまう」 「結局、何もわからなかったか」 「ねぇ、このまま僕になんの変化もなかったら、一緒に行っていい?」  海は、さきほど電源を切ることを承諾したはずだったが、やはり一緒に行きたいようだった。光が何かを言おうとした瞬間、光の携帯が鳴った。 「もしもし? 何、空が?」  光の慌てた声に、陸も海も顔を見合わせる。空は今、グアムにいるはずだ。 「藤谷さんて……」 「空の新しいオーナーだよ。あと、空の恋人」 「恋人?」  海といい、空といい、どうしてアンドロイドなのに恋人ができるのだ。自分にはないけれど、二人には人を愛するという感情があるというのか。 「わかった。そのまま部屋から出さないようにしてくれ、もうしばらく耐えてくれ。うん、頼んだ」 「空がどうしたの」  電話を切った光に、二人は駆け寄った。 「空は藤谷の仕事についていってグアムにいっていたんだが、突然、どこかに歩いて行こうとして藤谷が止めたら暴れ出したらしい。瞳が反転し、意識がないそうだ」 「どういうこと?」 「わからない。咄嗟に緊急停止を作動させたと言っていた。ひとまず電源を切る、は有効だったようだ」 「どうして、まだ時間はあるのに……」 「海、空はグアムにいると言いましたか? グアムの時差は日本の+1時間ではないですか?」 「そういうことか、空は地下で改造されたアンドロイドだったからプログラムが仕組まれていた、と」 「光、地下にいたアンドロイドは千体以上います。彼らが一斉に動いたら」  アンドロイドの総攻撃、地下にいたアンドロイドがもし地上に出てきたら、いや、このためにすでに地上に放たれていたら、いったいどんなことになるのか。 「光!」  扉が開いて、直人が帰ってきた。 「どうした?」 「地下工場の場所がわかった。無人タクシー出迎えに来た。行くぞ」 「空のこと、聞いたか?」 「ああ、こっちにも連絡があった。海、一緒に来い。おそらくプログラムに反応するのは、地下で改造されたアンドロイドのみで、確定している」 「はい!」  陸と海、そして光は直人と一緒に無人タクシーに乗り込んだ。  観月はどうしているだろう。これから起こるであろうテロ行為をどんな思いで見るのだろう、そして無事なのだろうか。観月のことを考えるとショートしそうになる。  陸はなるべく考えないように、隣にいる海の手をぎゅっと握った。
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