第6章:二人だけの秘密

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「まずいな、もうすぐ午前0時じゃないか」  夜も遅いというのに、なぜか道路は混雑していて渋滞している。光が苛立ちながら窓の外を見ていた。  そこへ直人の携帯が鳴った。 「はい。乾です。はい……はい……そうですか。我々も向かっています。はい。土井もいます。わかりました、もしものときはそのようにします。それでは失礼します」 「なんだって?」  電話を切った直人にすぐ、光は話しかけた。 「正式に機動隊へ応援要請があった。どうやらこの渋滞は大量のトラックが街へ向かっているかららしい。荷物検査の結果、不正改造された大量のアンドロイドが入っていたそうだ」 「どういうことだ」 「地下から運び出したんだ」  陸が呟く。おそらく、午前0時の時点で地上に運んでおいて、プログラム発動と同時に破壊活動に参加させるという算段だろう。 「光、ここからあと500メートルほどだ、降りよう」 「わかった」  四人は無人タクシーを降りて歩き出した。 「光、最新ニュース映像を受信したよ。見る?」 「頼む」  海が暗がりの地面に画面を投影した。アンドロイドたちが、どこかに向かって歩いていて、街の人々は反対方向に逃げている光景がニュースで取り上げられている。何か、危害を加えるわけでもなく、ただ歩いているだけのアンドロイドは不気味だ。 「自力で歩いているアンドロイドもいるのかよ」 「一体どこに向かっているんだ」 「待って! 海、画像を一時停止して」  陸はその歩いているアンドロイドたちの集団の中に見慣れた姿を見かけた。 「ペッパー! ソルト!」 「陸、お友達?」 「なんか、おかしい。瞳に意思がない」  ペッパーやソルトだけではなく、他にも地下で見かけたアンドロイドたちがいるが、様子が違った。いつもなら、表情が明るい。しかし今は、自分の意思を持たず、何かの命令で歩いている。そんな様子だ。 「ついでに言うと、機動隊と自衛隊に応援要請が出ている。何かあれば壊せと」 「嘘……」  まだどんな破壊活動を行うかどうかもわかっていないのに、破壊されることだけは決まっている。なんということだ。 「こんなことのために生きてたんじゃない!」  陸は、がっくりと肩を落とした。 「陸、大変なことになってる。こっちのニュース見て」  海は別のチャンネルのニュースを地面に投影した。そこには多くの技術者たちがバスから降りてくるところだった。 「この人たちは、地下にいた人たちだ」 「人質が代表して一人になって、他の人は釈放されたみたい」 ――そんなことするのは、絶対に、拓也だ。
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