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第7章:あなたを忘れることなんてできない
「陸! 陸!」
海が名前を呼んでいる。海じゃない。今、必要としている人は海じゃない。光でもない直人でもない。自分にとってかけがえのない人、それが誰なのか、思い出せない。
――ああ、そうか。
他のアンドロイドには破壊活動をするように仕掛けて、自分には観月拓也の記録を消すプログラムを仕掛けたのだと理解した。どうしてそんなことを考えたの。
「僕が忘れるわけ、ないじゃない……」
「陸?」
「だって、拓也のこと愛しているのに!」
陸が叫んだのと同時に、脳内でめまぐるしくデータベースの更新が始まった。パタパタパタと画面が切り替わっていく。いや、これは、記録がどんどん補給されていっているのだ。そして今まで表示されなかった観月拓也へのステータスが点滅する。あらゆる数値が上限まで達し、空白だったところに、文字が浮かび上がった。
――恋人。
流れ込む、恋心。観月のことが好きだ、と自覚する。
「陸?」
海が心配そうに、声をかける。
「好き。俺、拓也のことが好きだ」
「なに、いったい、どうしたんだよ」
呆然としている陸に光は声をかける。
「光、思い出しました。僕は拓也からあの日告白されました。一度しか言わない。僕は君を愛してる、って」
「あの日って廃棄の日か」
「僕に端末を繋いでくれませんか。見つけました」
「見つけたって、何を?」
「停止プログラム、と表示されています」
「なんだって! 直人、モバイル端末を貸せ、陸に繋ぐ」
直人は背負っていたリュックからケーブルとモバイル端末を取り出し、そのまま陸の首筋にある挿入口にケーブルを接続した。
光が急いでキーボードを操作する。直人も海も画面をのぞきこんでいる。
「非常信号停止プログラム! やっぱり陸の体の中にあったのか」
「どうなってる?」
「パスワードの入力を求められてる。陸、何か思い出した言葉はないか?」
「入力してみてくれますか? これから言う言葉を」
「ああ、言ってくれ」
「『リクハダレニモワタサナイ』」
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