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光は陸の言葉を聞いてキーを走らせ、エンターキーを押した。すると目の前で警察隊と衝突しているアンドロイドたちの動きが一斉に止まった。警察隊も周囲を慌てて見渡している。直人は立ち上がり、近くにいたアンドロイドに駆け寄った。
「再起動中だ。おそらくこの後は普通に起動するだろう」
「止まったってことか」
「陸、すごい止まったよ」
海が陸に抱きついた。陸は突然のことに頭の整理が追いついていない。脳内のプログラムがものすごい勢いで動いていて、熱暴走しそうだ。
「陸のパラメータが上昇することで、プログラムが発動する仕組みにしてたのか」
「ここまでしないだろ。究極の独占欲だな」
「乾さん、一体のアンドロイドが地下から出てきました」
「何? どこにいる?」
「あちらで保護しています。どうやら人質になっている人物を担いできたようです」
陸は、はっとする。一体、何が起きてるのだ。
「陸、拓也、助かったんじゃない?」
「行こう、歩けるか?」
光と直人に支えられて、陸はゆっくり歩く。すると目の前に救急車が見えて、ストレッチャーベッドに寝かされている人物が見えた。
「拓也……」
本当は走って駆け寄りたいのに、脳内のショートが激しく、思うように体が動かない。
「拓也さん!」
光の声に、横たわっている人物はゆっくりと顔をこっちに向けた。間違いない。観月拓也そのものだ。
「陸?」
名前を呼ばれ、陸はのろのろと観月に近づいた。
「拓也……」
力を振り絞って観月の胸に倒れるように抱き着いた。胸元の陸の頭を、拓也は優しく撫でた。
「えらいな。ちゃんと僕の願いを叶えてくれたんだな」
「光や直人のおかげです……あんな仕掛けにして、ひどい。あやうく拓也の記憶消されるとこだった」
「僕のすべてを思い出す瞬間、リロードしただけだ。君が僕のこと忘れるなんて、僕が許さない」
「それならよかった」
陸の目からぽろぽろと涙がこぼれる。
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