49人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
「光、複雑な解除プログラムにしてすまなかったな。他の技師に見つからないように細工したんだ」
「俺じゃなきゃ無理だったと思います」
「そうだな。君が陸と接触したら、必ず分解するだろうから、気づいてくれると思った。だから君がきっと見つけてくれると信じてた……ごほっ、ごほっ」
「拓也! 大丈夫?」
「あれからずっと監禁されていて、発作が起きてるだけだ。まぁこのままだと長くはないかもな」
「やだよ、せっかく助かったのに!」
「陸、ひとまず病院で診てもらおう」
「お願い、死なないで。僕、拓也に会ったら絶対に一番最初に言いたいことあったんだ」
「なんだ? 今、聞く」
「誰にも渡さないって言ってくれてありがとう。僕も……拓也が好き。拓也を愛してる」
「最後にその言葉を、また陸から聞けてよかった」
「何度でも言う! 愛してます」
「最高だよ、陸」
目の前の観月の目が閉じられていく。
「拓也! 嫌だよ、死なないで」
「陸、いいから」
光が陸を引きはがし、そのままベッドは救急車にのせられ、走り去っていった。脱力した陸をかろうじて海が支えている。
「りっ……きゅん」
「アイ?」
聞きなれた声に陸が周囲を探すと、そこには、衣装がボロボロになったアイが立っていた。
「どうして、アイがここにいるの?」
「このアンドロイドが拓也さんを守ってくれていたそうだ」
直人が解説してくれた。
「アイ、本当に?」
「うん。アイだけなの、まともだったのは。ほら私ここで修理されてなかったから」
「でもなんで、拓也を……」
「見つからないように隠れてたら、みづきゅん見つけたの。みづきゅん死んだら、りっきゅん、悲しむじゃん。だから頑張って運んだよ」
「アイ……ありがとうございます。アイのおかげです」
「えへへ、よかった。りっきゅん、の笑顔、好きーーー」
アイは陸の目の前で、崩れ落ちた。きっと稼働限界時間ギリギリだったのだろう。
こうしてアンドロイドによるテロは終わった。
最初のコメントを投稿しよう!