第7章:あなたを忘れることなんてできない

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「光、複雑な解除プログラムにしてすまなかったな。他の技師に見つからないように細工したんだ」 「俺じゃなきゃ無理だったと思います」 「そうだな。君が陸と接触したら、必ず分解するだろうから、気づいてくれると思った。だから君がきっと見つけてくれると信じてた……ごほっ、ごほっ」 「拓也! 大丈夫?」 「あれからずっと監禁されていて、発作が起きてるだけだ。まぁこのままだと長くはないかもな」 「やだよ、せっかく助かったのに!」 「陸、ひとまず病院で診てもらおう」 「お願い、死なないで。僕、拓也に会ったら絶対に一番最初に言いたいことあったんだ」 「なんだ? 今、聞く」 「誰にも渡さないって言ってくれてありがとう。僕も……拓也が好き。拓也を愛してる」 「最後にその言葉を、また陸から聞けてよかった」 「何度でも言う! 愛してます」 「最高だよ、陸」  目の前の観月の目が閉じられていく。 「拓也! 嫌だよ、死なないで」 「陸、いいから」  光が陸を引きはがし、そのままベッドは救急車にのせられ、走り去っていった。脱力した陸をかろうじて海が支えている。 「りっ……きゅん」 「アイ?」  聞きなれた声に陸が周囲を探すと、そこには、衣装がボロボロになったアイが立っていた。 「どうして、アイがここにいるの?」 「このアンドロイドが拓也さんを守ってくれていたそうだ」  直人が解説してくれた。 「アイ、本当に?」 「うん。アイだけなの、まともだったのは。ほら私ここで修理されてなかったから」 「でもなんで、拓也を……」 「見つからないように隠れてたら、みづきゅん見つけたの。みづきゅん死んだら、りっきゅん、悲しむじゃん。だから頑張って運んだよ」 「アイ……ありがとうございます。アイのおかげです」 「えへへ、よかった。りっきゅん、の笑顔、好きーーー」  アイは陸の目の前で、崩れ落ちた。きっと稼働限界時間ギリギリだったのだろう。  こうしてアンドロイドによるテロは終わった。
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