第8章:失われた記録

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「今日を待っててくれたと言ってくれました。僕は知っています。自分の気持ち」 「まいったな」  はあ、と観月は溜息をつく。陸はそれでも、やめる気はなかった。 「この気持ちは僕だけ、なのですか?」 「違うよ」 「え……」  腹を決めたのか、観月は目の前の陸を抱きしめた。 「一度しか言わない。僕は君を愛してる」 「僕も……拓也が好き。拓也を愛してる」 「裏コードのステータス、恋人。まさか、君が十五年経っても好きでいてくれたなんて」  十五年という月日をずっと待っていたという観月の言葉に、陸は涙が溢れた。廃棄される運命の自分と生きることを選んでくれたという事実に、言葉が出ない。 「君の気持ちが変わらなかったことに、もう僕は満足している」 「拓也……」 「今日、この日の記憶は消すことになる。でも僕は君とこの先、ずっと一緒にいる」  ここから連れ出す記憶を消さなければいけないのは陸にも理解ができた。気持ちが通じた記憶がなくなるのはつらいけれど、それでも観月と一緒に生きていけるなら、それでいい。 「覚えててほしい言葉がある」 「なんですか」 ――陸は誰にも渡さない。  このとき、自分のすべてが観月拓也で埋まっていくのがわかった。結果、記憶は消されることになったけれど同じように観月のことしか考えられなくなった時点で消されていた記憶、そして非表示になっていたステータスコードがすべて復元された。  観月が陸の中に仕掛けた停止プログラムは、陸の気持ちの解放が鍵になっていたと改めて自分の記憶から理解できた。
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