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「気がついたか?」
「直人?」
今度こそ現実に戻ってきたと確信した。目を開けると、横たわっていた自分のすぐ隣にいたのは、直人だった。そして陸はいつものアンドロイド用の診察台ではなく、人間が使うベッドの上にいた。
「ここは、どこですか?」
「病院だ。本当は、光の研究室でもよかったんだけど」
「目が覚めたら、すぐに拓也に会いに行けるようにね」
ぴょこっと顔を出したのは、海だった。
「海、拓也は無事?」
拓也の容体を思い出して、陸は慌てて身体を起こした。
「大丈夫だから、安心して。拓也、病気がかなり進行してたので手術したの。でも、もう話せるまでに回復してる」
「よかった……病気は肺がん……ですか?」
「そうだ。でも問題ない。今は人工肺の技術が進んでいて、命に別状もない」
幽閉されていたときに薬を飲めなかっただろうから、心配していた。しかし、命に別状がないというなら安心した。
「それより、おまえは大丈夫か?」
「え、僕ですか?」
「拓也さんが言うには、陸は復元された記憶の定着に時間がかかるから三日は起きないだろうと言っていた。今日はその三日目の朝だ」
「そんなに眠っていたんですか」
「すごいね、拓也は陸のことなんでもわかるんだね。本当に三日で起きるなんて」
「それは僕を作った人だから……かな」
もちろんそれだけではないといいなと思うのだけれど。
「陸、今は拓也のステータス、どうなってんの?」
「そ、それは……」
きっと海は知っててわざと聞いている。意地悪だ。
「その様子なら、ちゃんと正常稼働しているようだな。起動完了したら、拓也さんのとこに行くか?」
「も、もうちょっと、時間かかりそうです」
「そうか」
本当は、すぐにでも会いたい。けれど観月のことを考えると好きな気持ちが溢れてしまいそうになる。きっと顔を見たら抱きつきたくなってしまう。
人を好きになる気持ちってこんな風だったのだろうか。こんなにふわふわして、心がぽかぽかして、嬉しいなんて、知らなかった。
これを幸せというのかもしれない。
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