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第9章:穏やかな時間
結局、観月の病室に行ったのは目を覚ました次の日だった。光と海に付き添われ、観月の病室に入る。
「拓也さん」
ベッドの上で窓を向いて横たわっていた観月はゆっくりとこちらを振り向いた。
「もう大丈夫か?」
「はい……」
陸と目が合って観月は優しく微笑んだ。その姿に、陸はじわじわと涙をにじませる。
「毎日のように、陸は大丈夫かって聞いてたよ、拓也」
「えっ」
海に言われて、観月は、ははは、と照れくさそうに笑った。
「拓也さん、報告があります」
「なんだ?」
「今回、地上に出たアンドロイドは一旦すべてトニーエリクトン社が預かることになりました」
「ほんとですか」
その言葉に陸も驚く。
「すべてを修復できるとは約束できないけど、機動隊と衝突したアンドロイド以外は状態も悪くなかったので」
「そうか」
「あなたのおかげですよ。現場検証をした地下から整備図も発見されましたしね」
「地下は暇だったから研究が進んだよ」
「あと、ハダリ―は解散になりました。地下にいた人間も機動隊が来たときにはいなくなってたと聞きます。キングは国外逃亡の可能性があるそうで」
「……」
観月は何かを知っているのか、驚かなかった。
「光、僕はどんな罰でも受けるつもりだ」
「拓也…」
「僕は彼を止めることができたはずだ。あのプログラムの元を開発したのは僕だし、首謀者と言われても仕方がない」
「そこは警察に任せます。あなたの罪は、アンドロイド法の違反のみになる見込みですが」
「そうなのか……」
「ええ、停止プログラムのおかげで助かりましたしね。それにあなたは一体のアンドロイドを救うために、脅されていた可能性が高いという捜査資料もありました」
その言葉に陸は、はっとする。
「今は、ゆっくり休んで、ゆっくりこれからのことを考えましょう」
「ありがとう」
「陸も、拓也さんと気持ちが通じたわけだしね」
光の言葉に、かぁっと顔が赤くなる。
「それだけど、拓也さ、ボクらが気づいてないと思ってたの?」
「えっ」
海がにやにやと観月の顔をのぞきこむ。
「人間とアンドロイドの恋は叶うだろうかって、ボクたちに相談したの覚えてる?」
「えっ」
「海……!」
横たわっていた拓也が慌てて身体を起こす。
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