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「やあ、もう始まってる?」
「ちょうど撮影場所を作っていたところだ。よく来たね」
「観月博士ですね。はじめまして、藤谷和時です。あなたの論文、学生の頃に全部読みましたよ。アンドロイドを知り尽くしていて、愛情を感じました!」
「藤谷さん、ようこそ。僕もあなたのオーダーメイド時計に憧れている一人だ。いつか、お願いしたいと」
「わあ、ぜひ作らせてください! 明日にでも!」
「ちょっと、和時、無理な注文を受けないでください!」
和時と観月が握手をする中、空が怒っている。恋人が優しすぎてすぐオーダーメイドの注文を受けるのだと、よく聞いているが、本当に優しそうな人だと陸と海は顔を見合わせた。
「三人はこの長椅子に座れー。先に写真撮っちまうから」
「「「はーい」」」
光に呼ばれ、三人は置いてある長椅子に並んで腰をかける。ちょうど三人が座れるくらいのサイズだ。
「では、それぞれ後ろに立っていただいて、光と俺はその両サイドで」
「オッケ」
海の後ろにトキオ、空の後ろに和時、そして陸の後ろに観月が立った。直人は三脚のカメラで調整している。きっとオートタイマーで撮影するのだろう。
「嬉しいね、三人揃って記念日を迎えられるなんて」
海が嬉しそうに笑う。
「拓也はこういうところマメでしたからね。まさか陸海空シリーズの発売日に記念撮影をしようだなんて、光じゃ思いつきません」
「おい、俺の悪口言ったか、空」
「まぁまぁ。こうして写真に残るのはいいことだよ。まぁ老けていくのは僕たちだけなんだけど」
「観月博士は年齢の割に若いですよ。かわいい恋人がいるからですか」
「か、和時さん!」
「そうですね、間違いないです」
「拓也まで!」
「わお。拓也、デレデレじゃん! トキオ見習ってよ」
「デレデレとは、なんだ?」
「じゃあ撮ります。いきますよ」
直人が早足で列に加わる。
「光、変顔して!」
「バーカ、なんでだよ。俺はかっこいい顔するんだ。海はアホ顔やめとけよ」
「ちょっとぉ!」
「そこの親子、うるさい。ほら、5秒後に撮影だ」
5、4、3、2、1! 三人のアンドロイドが声を合わせると、パシャッとシャッター音がした。
「よし、長椅子を並べてテーブル出すぞ。手伝え、おまえら」
「はーい!」
撮影後、光の指示に海と空とトキオが従っている。和時と直人が食料や飲み物をテーブルに談笑しながら並べている。
その風景を、陸は少し離れたところからじっと見つめていた。
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