一、始まりの夢は……?

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「おい!洋、大丈夫か?」 「うう……んん」  誠二が寝ている三笠に声を掛けると寝言でううん、と否定の言葉が返ってくる。寝言は返事したら駄目みたいな話があった気がするので一也は何も話さなかった。  三笠はとても魘されているようだ。まるで朝の自分だ、と一也は思った。一也たちは三笠が起きるまで三笠の隣にいた。                ✳︎  洋介を見守って十五分程して……。 「はぁはぁはぁ……」 「「うわっ。……大丈夫か?」」  洋介が急に起き上がった。一也たちは三笠が起きて少し吃驚した。がその後に不安が(まさ)り、おずおずと洋介に()う。 「……うん。大丈夫だよ。寝過ぎちゃったな。あはははは」 「無理しなくて良いよ?」  誠二は安心半分心配半分の心境で洋介に言う。やはり誠二は良い奴だ。 「もう全然大丈夫だから。それよりこんな時間にごめんね」  洋介は自分の事よりも相手のことを気にしている。誠二以上の良い奴だ。普段から洋介は困っている人を放って置けないのだ。だが、自分も病弱なため、ミイラ取りがミイラになる事も多々(たた)あるらしい。  一也は洋介の心配より先に気になっていた事を()いた。ここまで細かい質問だと誠二に薄気味悪がられてしまうかも知れないので、先に帰ってもらった。最初に一也が訊いた事は、 「どんな夢を見たか詳しく教えてくれ!」 だった。夢の事を誰にも打ち明けることの出来なかった一也にとって唯一の救いになると思ったのだろう。                ✳︎  一也が訊いた事は間違いでは無かった。質問の回答を(まと)めると洋介が見た夢は覚えている事。覚え始めたのが小学一年生だった事。そして夢の内容が酷似しているものがあった事と様々な事が一致している事が分かった。一也は確信した。洋介もそうなんだ。自分と同じ事が起きてるんだな、と。それは安心材料でもあり、不安材料でもあった。自分以外もこう言う夢を見ると言う安心感と同時に、ここまで同じだと何かが起こってしまうのではないかと言う不安感に襲われた。  この時の一也の勘は間違ってはいなかった……。
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