一、始まりの夢は……?

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               ✳︎  次の日の夜。一也は洋介の話をもっと詳しく訊いた。最初に見た夢の中に洋介もいたかも知れない。洋介は自分の知らない事も知っているのかも知れないと、(わず)かな希望に()けて。  洋介はクラスの中で頭が一番良いと言っても過言(かごん)ではない。学校を休んでいても次の日にはしっかりと授業に付いていけている。そして、運動神経抜群なのだ。将来は勉強関連でも運動関連でも仕事を(こな)す事が出来るだろう。それに比べて一也は勉強並。運動もあまり得意ではない。唯一の取り柄はその時の最適解を見つけられることだ。これだけは誰にも譲れない特技だ。  洋介の記憶と一也の記憶を比較して最初に見た夢の最適解を見出(みいだ)した。まずその場には五人程ではなく、死角に隠れていない限り八人いた事が明らかになり、髪型、体型をぼんやり覚えていた洋介の証言を頼りに同世代の人があと二人、大人の人が三人は少なくともいる事が分かった。これは大きな進歩に繋がったと一也は思った。                ✳︎  和也のその日の日記には今日分かった事を纏めたメモがあった。その内容はこうだった。 『三月十四日 始まりの夢は……。  一人目 佐藤一也 最適解を見つける事が得意。  二人目 三笠洋介 なんでも出来るすごい奴。病弱。  三人目 ??? 男の子。制服を着ていた。  四人目 ??? 女の子。三人目と一緒にいた。  五人目 ??? 男性。眼鏡を掛けていた。近くにいた。  六人目 ??? 男性。筋肉が凄かったらしい。  七人目 ??? 女性。頭良い感じがした。鏡の前にいた。』  この日記を見る限り、最後の方はあまり分かっていないようだ。ただ、これを書いている時の一也はあんな事になるとは予想だにしておらず、ただ、興味深かったから、書き残しただけだった……。  その後一也はこの日記の存在を忘れ掛けていた。まさか次に判明した人物があいつで、もう和也たちの前に現れていたなんて思ってもいなかったから……。
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