6人が本棚に入れています
本棚に追加
✳︎
「先生、朝言ってた夢って、どんなのですか?」
「なんでそんな事今訊くんだ?」
先生は聞き流しているようだった。そんな話、話したって何がある、と言うように。だが一也は再び問う。
「夢。暗いところってどんなところでしたか?」
「ははっ。そんなの訊いてどうするんだ?」
だが先生は正面に取り合ってくれない。なので一也は外れれば辱めが、当たれば仲間が手元に来る一世一代の大勝負を仕掛けた。
「先生、夢。思い当たるでしょ?分かるよ。だって俺、先生と同じだもん。あそこにいたの先生でしょ。俺らに教えてくれよ、エイ先生。先生は眼鏡かけてるから俺たちの証言とも一致するしね」
さあ、先生はどう出る。転がるサイコロは何を示したか。先生はどのマスに止まるか。ここで六が出たなら仲間だ。だがそれ以外は……一般人。つまり辱めを受ける。
一也の脳内のサイコロが止まった気がした。先生が引いたマスは……一也たちと同じだった。
「やはり……か。お前たちもやっぱりそうなんだな。そうだよ。俺は夢で子供や大人を見たよ。夢は忘れられないし。こうなったのは七年程前。どう?これで本当だって分かってくれる?」
「先生、分かったよ。ありがとう」
「先生、一つ訊いて良いかな?」
一仕事終わったところで洋介が話す。きっと大事な事だろう。
「やはり……って事は僕たちがそうなんじゃないかって思ってたって事だよね?何でそう思ってたの?」
この後に先生が言った言葉は一也たちを揺るがす内容だった。重要な、最重要な事だった。
「ああ、それは……勘だ。ただこの現象が起きているのはこの地域、原次継地域だけらしい」
「どうして?何でそんな事知ってるの?」
一也は思わず訊く。頭が展開に追い付いていないのが分かる。
「実は───もなんだ。で、彼女が見たんだってさ。夢で」
「「え、ええ〜!」」
どうやら一也の、夢の仲間は三人、いや四人に増えたようだ。そりゃそうだ。一也たちだけが行動してた訳じゃ無いよな。今考えれば先生は俺たちにヒントを与えていたのかもしれない。一也に、こうなるように仕向けられていたのかも知れない。そうだとしたら一也たちは先生の作った線路に乗せられていた。
一也はここでエイ先生の特徴の片鱗を見ることになったのだった……。
最初のコメントを投稿しよう!